プロローグ





「ち、ちくしょう……」

全身傷だらけの少女が、うつ伏せに倒れた状態で呻いていた。

「アタシは、アタシは、絶対に生き延びるんだ。そして、絶対アイツに……」

少女は、朦朧とした意識の中で、顔だけを上げて誰かを睨み付けているようだった。親の敵か恋人の敵でも見るような、深い憎悪と怒りを含んだような、そんな凄惨な表情をしていた。

「げほっ……」

少女は、僅かに血を吐いた。どうやら、もう少女の体力は限界らしい。

「……は、コロシテヤル……」

それでも、少女はまだ凄まじい殺気を発していた。だが、それも長くは続かなかった。とうとう少女は、力尽きて動けなくなってしまったのだ。少女は、ゆっくりと死に向かっていた。そのまま放置されていれば、少女は本当に死んでいたかもしれない。


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「あら、あれは何かしら」

少女が動きを止めて程なく、少女の側を偶然親子連れが通った。まだ小学生位の少年と、その母親だ。

「どうしたんですか、お母さま」

少年が母親に聞いたが、母親は少年に静かにするようにと言って、少女が倒れている辺りに近付いた。そして少女の脈をとり、まだ生きていることを確認する。

「ねえ、ニコル。急いでお父さまを呼んできて」

「う、うん。分かったよ、お母さま」

ニコルは、慌ててその場を離れた。

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その後、少女はニコルの家に運ばれ、医者の治療を受けることができた。少女は極度の栄養失調であり、そのために命が尽きようとしていたのだ。医者は少女に栄養注射をすると、2〜3週間安静にしていれば元気になるだろうと言った。

このため、ニコル達はほっと一息ついたのだったが、大きな問題が持ち上がった。翌日目覚めた少女と話をしたところ、少女はなんと記憶が無いと言うのだった。少女が覚えているのは、自分の名前がアスカということのみだった。

その後、方々手を尽くして少女の手がかりを探したのだが、少女のことは何一つ情報が得られなかった。このため、ニコルの母ロミナは、夫を説き伏せて少女を養女として迎え入れることにした。ロミナは、どうしても少女を手放してはならないという直感に従ったのだ。また、ロミナは何故かこの少女が、将来ニコルを守ってくれるのではないかという期待を密かに抱いていたからでもある。

こうして、その少女「惣流・アスカ・ラングレー」は、「アスカ・アマルフィ」として、ニコルの姉となった。



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あとがき

筆力が無いので、不定期更新になります。また、設定はあまり厳密なものにはしません。設定に気を取られると、時間がかかるからです。ですから、多少の間違いは笑って許してください。