PHASE18 訓練と偵察と


「なんで、バクゥを回さないのかね、ジブラルタルの連中は?」

バルトフェルドは、盛大なため息をつきながらぼやく。ジブラルタルからの補給が届いたと聞いて、喜んでダコスタに内訳を聞いたところ、モビルスーツはザウートが6機の予定だという。バルトフェルドは、聞かなければ良かったと後悔する。

「申し訳ありません。なんでも、ユーラシアにある守りが強固な基地を攻めあぐねていて、こちらに割ける戦力は無いとのことでしたので、とにかくなんでもいいからとお願いしたんですが……」

ダコスタは、上官の希望をかなえられない悔しさのためか、唇を噛み締めている。

「せめて、優秀なパイロットでも、回してくれないかねえ」

バルトフェルドの呟きに、ダコスタの顔が更に暗くなる。

「優秀パイロットはいたんですが、元クルーゼ隊ということだったので、丁重にお断りしました。地上に降りて間もないということでしたし」

ダコスタは、しまったかなあという顔をしたが、バルトフェルドはダコスタの判断を褒めた。

「君の判断は上出来だよ、ダコスタ君。そいつらは、地上戦の経験は無いんでしょ。いれば、かえって足手まといになりそうな気がするな」

バルトフェルドは、肩を竦める。その時、何気なく窓の外を見たところ、ちょうど輸送機から物資が降ろされるところだった。

「おや、あれはバクゥじゃないのかね?」

輸送機から降りてきた機体を見て、バルトフェルドの渋い顔がぱあっと明るくなっていく。

「えっ、まさか。でも、本当ですね。どうしたんでしょうか?」

最初は、バルトフェルドにからかわれていると疑っていたダコスタだったが、実際にバクゥを見たら信じないわけにはいかない。直ぐに輸送機に連絡をとり、事情を確認する。

「で、嬉しい誤算の原因は何かね?」

ダコスタと輸送機との連絡が終わると、待ってましたとばかりに、バルトフェルドは事情を聞く。すると、ダコスタは少し暗い顔になる。

「元クルーゼ隊の連中が、バクゥを3機も使うそうです。我々に回ってくるバクゥは、4機だそうです。それ以外に、連合から鹵獲したストライクというモビルスーツが3機、これも元クルーゼ隊の連中が乗るそうです」

ダコスタは、ぬか喜びだったと落ち込んだ。実質、自分達に回されるバクゥは4機しかないからだ。まあ、それでもザウート6機よりはマシなのだが。

「地上戦の経験が無いエリートさんが、6人もか」

バルトフェルドは、6機のモビルスーツを戦力外に計算し、がっくりと肩を降ろした。これまでの経験から、地上に降りたばかりのパイロットは使えないと踏んだからだ。



招かれざる客ではあるが、一応援軍である者を出迎えないわけにはいかない。バルトフェルドは、ダコスタと共に甲板に出た。すると、3人ほどが砂混じりの風と格闘していた。

「砂漠へようこそ――ってね」

バルトフェルドの声に、3人の少年が振り返ってバルトフェルドを見た。バルトフェルドは、続けて言う。

「ようこそ、レセップスへ。指揮官のアンドリュー・バルトフェルドだ」

3人の少年は、指揮官という言葉に反応する。

「アスラン隊、イザークジュールです!」
「同じく、ディアッカ・エルスマンです!」
「同じく、ラスティ・マッケンジーです!」

イザーク達は、砂漠の虎に対して姿勢を正して敬礼した。

「君達を歓迎するよ。おや、人数が足りないようだが」

バルトフェルドは、話す途中でパイロットの数が合わないことに気がついた。そこで辺りを見回すと、人影が近づくのが見えた。だが、顔が見えた瞬間、バルトフェルドは素早く銃を抜いて構えた。

「な、何をするんですか!」

ダコスタは、バルトフェルドの奇怪な行動に、気が触れたのではないかと慌てる。そもそも、人数が足りないことよりも、隊長がいないことに気付くべきだろうに。だが、バルトフェルドは、いたって冷静だった。そして、滅多に見せない真剣な表情になる。

「これは、どういうことかね?どうして戻ってきたのか、説明してもらいたいんだが」

バルトフェルドは、アスランとアスカを睨みつける。彼は、二人がアークエンジェルのクルーだと誤解しているので、二人が何か企んで潜入してきたと思ったようだ。だが、アスカは顔色一つ変えずに、しゃあしゃあと言い放つ。

「アスラン隊副隊長、アスカ・アマルフィです!初めまして!」

アスカは、唇の端を僅かに歪ませながら敬礼する。どうやらアスカは、先日出会ったのは別人だというベタな言い訳を押し通すつもりのようだ。バルトフェルドはその時、地球軍のパイロットの件では、アスカを責められないことに気付いた。敵のパイロットを逃がしたのは、他ならぬ自分なのだから。責められないとなると、言い逃れを咎めるのも難しい。

「アスラン隊隊長、アスラン・ザラです!」
「同じく、キルア・マットです!」

アスランとキラ――今はキルア・マットと名乗っているが――も、アスカに並んで敬礼する。バルトフェルドは、アスランが誰なのか、名前を聞いた時点で理解した。ザラ委員長に息子がいることや、アマルフィ議員の娘と息子同様、ザフトに入ったことも思い出した。そして、二人が地球軍であるというのが、全くの誤解であることにようやく気付いた。

「おや、人違いだったようだ。これは失礼した。ことに、アスカ君。君は、私が知っているナチュラルの少女に似ていてねえ。確か、地球軍のパイロットのお仲間だったようだが」

銃を下ろしながら、バルトフェルドはアスカを睨むようにして見つめる。ナチュラルだなどと、よくも騙しやがって。彼の目はそう叫んでいるようだった。

それにザフトの兵士であるならば、なぜ地球軍のパイロットと一緒にいたのかという疑問が、バルトフェルドの頭の中に浮かんでくる。バルトフェルドの顔は険しくなるが、アスカはそんなことは気付かないような素振りを見せる。

「へえっ、それは奇遇ですね。実は私も、ナチュラルなんですよ」

アスカは、薄ら笑いを浮かべて応える。あくまでも、しらばっくれるつもりのようだ。その時、それまで黙っていたダコスタが、何かを思い出したように口を開いた。

「あなたがアスカ・アマルフィさんですか?弟のニコルさんのピアノを、何度か聴いたことがありましてね。私は、彼のファンなんですよ。彼はお元気ですか?申し遅れましたが、私は副官のマーチン・ダコスタです」

ダコスタは、笑顔で手を差し出す。大切な弟であるニコルのファンと言われて、アスカも悪い気はしない。

「ありがとう。ニコルは元気です。今頃はプラントですが、じきにジブラルタルに着くはずです」

アスカは、にっこり微笑んで手を差し出し、握手をかわした。その様子を、バルトフェルドは複雑な表情で見つめていた。



アークエンジェルのブリッジでは、作戦会議が行われていた。

「俺達の仕掛けた地雷原があるんだ。それを使わない手はねえだろう」

レジスタンスのリーダーであるサイーブは、地図の一点を指し示し、そこで勝敗を決するべきだと主張する。だが、レイは首を傾げる。

「敵も、同じことを考えるでしょう。そうなると、待ち伏せされる危険があります」

レイは、挟撃される可能性も高いと指摘する。

「じゃあ、こちらも伏兵を配置するか?そんな戦力があればだがな」

ムウは、うーんと言ってうなる。敵は、最初の攻撃で5機のバクゥを失ったとはいえ、敵の戦力は少なく見積もってその倍以上はあるはず。それ以外の戦力にしても、どれほどあるのかわからないのだ。下手に戦力を分けると、各個撃破される恐れもある。

「なんとか、戦わずに逃げられないのかな?」

シンジが呟くと、カガリがきっと睨む。

「お前なあ、そう思うのは勝手だが、レジスタンスのみんなの前で言ったら、ただじゃすまないぞ」

カガリの言葉に、シンジははっとして俯く。自分達は逃げればそれで済むが、レジスタンスはそうはいかない。だからこそ彼らは、アークエンジェルがZAFTと戦ってくれることを期待して、補給その他に協力を申し出たというのに。シンジは、そのことをすっかり失念していたのだ。

「まあ、シンジは優しいからね。でも、戦って全滅っていうのもよくないよね。戦いを避けて、なおかつレジスタンスも助かる方法ってないのかな?」

マナは、下心見え見えだが、シンジのフォローをする。あまりにも見え見えなので、サイーブですら苦笑いする。

「虎に押さえられた東の鉱区さえ戻ればな。だが、奴がすんなりとウンと言うはずがねえ。戦いは避けられんさ」

サイーブは、マナを諭すように言う。サイーブとて、戦いたくて戦っているわけではないのだ。

「何より、ZAFTが私達をすんなりと逃がしてくれるはずがないわ。地球に降りて、直ぐに攻撃を受けたのがその証拠よ。ただ、私達がZAFTを破ったとしても、その鉱区が取り戻せるという確証も無いのだけれど」

マリューも、戦闘は止む無しと言う。もっとも、マリューはシンジを叱ることもできたが、そうはしなかった。作戦会議で、作戦自体に疑問を言うことは、本来は許されないことだからだ。マリューは、やはりこういうところが甘いようだ。

「いずれにせよ、早く動くべきです。さもないと、ビクトリアから部隊が戻ってくるでしょう」

ナタルは、今は一時的に戦力が少ないので、この好機を逃さない方がいいと言う。先日、アフリカ中部にあるビクトリア宇宙港が陥落したのだが、ZAFTはここの攻略に、かなりの戦力を集中したはず。そのおかげで、この辺りの戦力が不足しているというのだ。だが、陥落から10日ほど経つので、そろそろ周辺の制圧も一段落して、こちらに戦力を回せる余裕が出るかもしれない。そうなると、更に不利な状況になるとナタルは言う。

そして、最終的にサイーブの意見が通って、タルパティア工場区跡地へと向かうことになった。出発は、2日後。補給物資が明日には全て届くことになっているので、積み込みや準備が整い次第出発することになったのだ。



アスカ達は、ダコスタにレセップス内を案内された後、パイロット専用室へ通された。基本的に2人で一室なのだが、今回無理に連れてきたヒカリをアスカと同室にしたため、キラ、アスラン、ラスティの3人で一部屋を分け合うことになった。アスカは、早速ヒカリ以外を召集し、作戦会議を開いた。

「今日の午後から、早速訓練を開始するわよ。キラとラスティは初めての機体だから、慣れることを重視してね。アスランは、イザークやディアッカと一緒にフォーメーションの訓練よ。それから、空中で思い通りに機体操作が出来るようにしておいて。いいわね?」

アスカの指示に、5人とも頷く。

「アタシは、途中から単独行動をとるわ。目的は、アークエンジェルに関する情報収集よ。ただ、これはバルトフェルド隊長にも秘密よ。いいわね?」

アスカが睨みをきかせると、誰からも反対はでなかった。

そして午後になって、アスカ達はモビルスーツに乗って訓練を始めた。中型陸上戦艦のピートリーを借り受けた、大掛かりなものだ。アスカ達は、30分間の訓練と30分間の休憩を繰り返しながら、訓練場所を移動していった。そして、数時間後には、アークエンジェルから20キロ離れた地点に到着した。

この距離は、最初にバルトフェルドがアークエンジェルを攻撃した時の、レセップスとアークエンジェルの距離と同じだ。アークエンジェルは、20キロ離れた敵に攻撃できなかったばかりか、攻撃を受けるまで察知すら出来なかったのだ。アスカは、このことから20キロ離れていれば安全だと判断した。

「さあて、早速偵察といきますか」

アスカは、オフロードバイクに跨って、単独でアークエンジェルへと向かった。



アークエンジェルのハンガーでは、シンジが浮かない顔をしていた。

「ふうっ……」

シンジがため息をつくと、視界に見知った顔が入った。フレイとミリアリアだ。

「どうしたの、シンジ?元気ないじゃない」

フレイは、義兄のシンジを心配そうに見つめる。

「シンジ君は、元々戦いは好きじゃないみたいだし、しょうがないんじゃない。明後日には、砂漠の虎と戦うんでしょ?シンジ君じゃなくたって、ため息つきたくなるわよ。何か悩みがあるなら、言ってみなさいよ」

ミリアリアは、シンジ君は優しいからねと言って、微笑む。シンジは、自分のことをこんなにも心配してくれる人がいることに気付いて、なんだか心が暖かくなった。

「心配してくれて、ありがとう。実は、砂漠の虎に会ったんだけど、悪い人じゃなかったんだ。それに、僕を助けてくれた人が言ったんだ。ZAFTよりも、地球軍の方が悪いって。それで、悩んじゃってね」

シンジは、無意識に首から下げたペンダントを握り締める。すると、フレイがそれに気付いた。

「あれ?シンジ、何よそれ?そんなペンダント、初めて見るんだけど」

何気なくフレイは言ったつもりだったのだが、シンジは何故か動揺し、裏返った声で答える。

「あ、これ。カガリと一緒に買い物した時にね」

シンジは、なんとなく気に入ったから買ったんだよと言ったのだが、それで騙されるフレイではなかった。

「それ、もしかして誰かからのプレゼントじゃない?それも、女の子からじゃあ?」

フレイの指摘は、図星だった。もっとも、マナかレイが抜け駆けをしたものと思っていたのだが、そんなことはシンジにわかるはずがない。このため、シンジは大いに慌てる。

「な、何を言ってるの?そんなこと、あ、あ、あるわけないよ」

シンジは否定するが、あまりにも挙動不審であるため、ますます疑惑を招く。しかし、シンジはなんとか二人の追及から逃れることに成功した。



アスカは、レジスタンスの基地に慎重に近付いていったが、アークエンジェルが隠れている岩山にはたどり着くことができなかった。砂漠には隠れる場所がなく、レジスタンスの見張りに気付かれずに接近する方法が無かったからだ。アスカは、アークエンジェルから5キロほど離れた位置にある岩陰で、バイクから降りる。そして、双眼鏡を取り出してアークエンジェルを探した。

「見つけたわ、アークエンジェル。でも、ここからではちょっと遠いかしら?」

アスカは、ポケットから携帯電話に似た形の機械を取り出して、不安げにスイッチを入れる。そして、その機械にイアホンの端子を差し込み、イアホンを自分の耳に当てる。すると、イアホンから何かが聞こえてくる。

「良かった。成功だわ」

アスカは微笑み、イアホンから流れる音に耳を傾ける。

アスカは、その場に30分ほど留まってから、再びバイクに乗ってピートリーに戻った。



レセップスに戻ったアスカは、アスランと一緒に食事をしないかと誘われ、断る理由も思いつかなかったので、アイシャも交えて4人で夕食を食べることになった。最初は取りとめの無い話をしていたのだが、急にバルトフェルドの顔が真剣なものに変わった。

「アスラン君にアスカ君。正直に言ってくれないか。何で地球軍のパイロットと一緒だったのかね?」

バルトフェルドは、アスランとアスカの顔を、交互に見つめる。アスカは少し迷ったが、目的だけは正直に言うことにした。

「私達は、アークエンジェルとそのクルーを、可能な限り無傷で手に入れたいんです。そのために、アークエンジェルのクルーを探し出して、何とか仲間に引き入れようとしていたんです」

アスカが言葉を選んで話すと、バルトフェルドは鼻で笑った。

「あの戦艦を、無傷でか?僕も戦ってみてわかったけどね、あの戦艦は半端でなく強いよ。勝つことさえ、難しいと思うんだがね」

バルトフェルドは、アークエンジェルの鹵獲は不可能だと言うのだ。だが、アスカは冷静に言い返す。

「バルトフェルド隊長の戦闘記録は、確認しました。しかし、おそらく隊長が考えているよりも、アークエンジェルは10倍は強いですよ。正直言って、正面から戦ったら、隊長は必ず負けます。例え、今の10倍の戦力があったとしてもです」

アスカは、バルトフェルドがアークエンジェルを甘く見ていると指摘した。

「口だけなら、何とでも言えるわ。あなた達、今までずっと負けっぱなしだったんでしょ。そうでなければ、あの艦はとっくにザフトのものになってるわよねえ」

そこに、アイシャが口を出す。アイシャは、アスカのことを口だけの女だと思ったらしい。だが、これにはアスランがカチンときた。

「どうやら、大きな誤解があるようですね。我々は、連戦連勝ですよ。ヘリオポリスでは、地球軍の秘密基地を破壊し、敵の新型モビルスーツを鹵獲しました。その数日後には、地球軍の戦艦3隻を鹵獲し、更に1機のモビルスーツを鹵獲しました。10日ほど前も、地球軍の第八艦隊を打ち破り、数十隻の戦艦を鹵獲しました。アークエンジェルは、我々に負け続けて、逃げているんですよ」

アスランは、滅多にないことだが、自分達の戦果を誇った。

「そういえば、3日前に地球軍の基地を攻略したわね。おかげで、また勲章が増えるみたいね。アークエンジェルに比べたら、赤子の手を捻るようなものだったけど。しかし、地上戦は張り合いが無いわねえ。もっとも、海中や砂漠での戦いは、宇宙での戦いよりも厳しいんでしょうけど」

アスカは、地上戦は楽だと言いつつも、バルトフェルドの顔を潰さないような言い方をする。

「ほう、君達の戦いをもう少し詳しく知りたいねえ」

バルトフェルドは、アスランやアスカの話を聞いて、興味を持ったのか、どんな戦いをしてきたのか尋ねてきた。アスカは、キラに関することは避けつつも、概ね事実を話した。

ヘリオポリスでは、ミゲル達の乗るジンが全滅したこと。最初は、鹵獲した機体が思ったように動かず、苦戦したこと。オーブの量産機は手強かったが、OSを改良した後はなんとか倒せるようになったこと。地球軍の量産機には、未だにてこずっていることなどだ。

「正直に言うと、ジンではダガーには歯が立ちません。アークエンジェルにはビーム兵器が通用しませんが、ビーム兵器無しでは、ダガーにはかなわないため、アークエンジェルにたどり着けません。かといって、ビーム兵器と実体弾の両方を持ったモビルスーツはありません。そうなると、ダガーを先に倒すしかないのですが、2機残ったダガーは、アスラン隊の全力をもってしても倒すのは容易ではありません」

アスカは、悔しそうにして唇を噛み締める。2機のダガーのビームシールドを破るのは、至難の業であり、ニコル以外には成功した者はいないのだ。しかも、肝心のニコルが、どうして破れたのかわからないと言っているのだ。だから、次も必ず破れるとは限らない。

「そうなると、数で攻めるしかないということか」

バルトフェルドは呟く。数で押して、倒せないまでもバッテリー切れを狙う方法が考えられる。だが、その数が問題だった。中途半端な数では、返り討ちに遭うだろう。

「倍の戦力があれば、あるいは成功するかもしれないといったところです。策を練らないと、我々は全滅するでしょう。しかも、敵に隠し玉が無いとは言い切れません」

アスカは、赤いアストレイを思い出していた。アストレイに対しては、緒戦こそ惨敗したが、何度か戦ううちに互角に戦えるように持ち込むことができた。しかし、赤いアストレイが現れてからは、再び不利な状況に追い込まれている。同じことが、今後も起こらないとは限らないのだ。

「しかし、かといってまんまと逃がすわけにもいかんしなあ」

バルトフェルドがぼやくと、アスカは小声で囁く。

「試してみたいことがあるんですが……」

アスカの提案に、バルトフェルドは不機嫌な顔をした。







あとがき



次回、アスカ達はアークエンジェルを討つのでしょうか?